モノ作り大国日本がその地位を失ってはや数十年。
近年になってやや持ち直してはきているものの、かつてのように日本が生産大国として世界に君臨するのはもはや不可能のように思う。
何よりも、今の日本の若者がブルーカラーの製造業に今更好んで就くとも思えない。
時代は変わってしまったんだね。間違いなく。
現在の日本の接客レベル
では日本がこれから向かう先はサービス業となるのか。それもどうかな。
はっきり言って、今の日本の接客レベルも随分酷い。
まともな接客をしている店なんて昔と比べると本当に少なくなった。
レジでのお釣りの渡し方なんか見ても本当に酷い。
よほど客の手に触れたくないのか、小銭を客の手の上にボンと落とすように置く店員、
小銭がうまく渡せずその内の1枚が床に転がって、それを客が拾っても「すみません」の一言も無い店員。こんなのは本当に日常茶飯事。買い物していて不快になる事の方が最近じゃ多いくらいだ。
だから不快な思いもせずに物が買えて、しかも安くて早いAmazonを使ってしまうんだよ。その辺もう少し真剣に考えてくれよ店側も。
やれ「客が来ない」だの「不況だ不況だ」言ってりゃいいってもんじゃないぞ。客が店に来ないように仕向けてるのは案外お前らの接客への考え方なのかも知れないぞ?
あと、オペレーションが一貫してない店も最近は本当に多い。
例えば、「お煙草はお吸いになりますか?」とか「大盛りにしますか?」という質問を、入ってくる客全員にしない店が多い。
客を見て煙草吸いそうとか沢山食いそうと思った人にだけ聞いてんのかも知れないが、そもそも見かけでそんなこと分かるか。
俺は痩せてるが人の数倍は飯を食う。そんなの見かけで判断したって分かるわけないだろ。
とにかくサービスが一貫してない店は、やがて客は寄り付かなくなるもんだと肝に銘じるべきだ。こないだはやってくれたのに今回はやってくれない、みたいなのを感じたら客は二度とその店には行かない。
そもそも毎回やれないサービスなら最初からやらない方がまだマシだ。中途半端なことをするもんじゃない。
とまあ、最近の日本人はこんな程度のサービスしかできないくせに、「ブルーカラーは嫌だ」とか言ってんだからね。そりゃあ日本の国際競争力も無くなるわけだ。
まあそれでも海外に比べればマシなんだろうけどね。コストコなんか行くとそれはよく分かる。
コストコのような外資系企業の従業員なんてもはや接客でもなんでもない。ボランティアでもしてるつもりで客と接しているからね。まああれはあれでアメリカナイズされたフレンドリーで新しい接客の形かも知れないが。
教育すれば接客は良くなる?
大体、接客技術なんてのは教育次第だって言うけど、俺はそうは思わないんだよね。
ブックオフみたいないかにも嘘臭いマニュアル染みた「いらっしゃいませこんにちはー」なんて聞いてもいい気分になんて全くならない。むしろ不快。
つまり画一化されたマニュアル的接客じゃなくて、もっと心の奥深くから出るお客さんへの気配りっていうの?そういうのを期待しているんだよね。少なくとも俺は。
だからシステムがどうこうっていうのも違うと思うんだよね。少なくとも日本がこれから向かうべきサービスは。
「つけ麺大王」に見た極上のサービス
自由が丘に「つけ麺大王」というラーメン屋がある。
まあ、どこにでもありそうなチェーン店ではある。
ここの店の木くらげ玉子ラーメンが大好きで、自由が丘に行くとついついこの店に行ってしまう。
さてこの店、入ると全席がカウンター。店員は二人。
そのため、客はみんな自然に厨房で調理するこの二人の店員の挙動を目で追うことになる。
なるほど、手際はいい。コンロの上の棚に様々な調味料が並べられ、それを二人の店員が手際よく順番に中華鍋に投入していき、美味そうな木くらげ炒めが完成する。
全ては目分量。これは結構な芸術。見てるだけで楽しめる。
だが、その後の店員の行動に、思わず「え?」となってしまった。
それは店員が注文の品を客に出し終わった後。
順番からして今度は俺が頼んだ木くらげ玉子ラーメンの番。
中華鍋に木くらげ、野菜を投入し、例によって手なれた手つきで調味料を次々と投入していく。
ここまでは完璧だ。玉子もいい具合に炒められている。
だが次の瞬間。
「ごちそうさま」
一人の客が立ちあがって、レジへと進んだ。
炒め物をしていない、もう一人の店員がサッとレジへ向かい、会計の対応をする。
オペレーションとしては申し分ない。だが、
なぜかもう一人の、俺の木くらげ玉子炒めを作っていたもう一人の店員の手も止まった。
何と、その店員は調理の手を止め、そのお客さんに「いつもありがとうございます」と言い、そのお客が出ていくまでずっと見続けた。
「おいおい・・・木くらげ炒めが焦げないか・・・?」
と俺は心配になってきた。余程の常連だったんだろうか? だが別に調理の手を止めてまで見送る必要は無いだろう、と思ったが、まあいい。常連を大事にしたい気持ちも分かる。
やがて注文した木くらげ玉子ラーメンが運ばれてきた。
心配した炒め物の出来もまあ、問題無し。だが調理を止めたことはやはり気になった。
そして食べ終わり、会計のためレジへと向かった。その時、
その時、この店の考える「サービス」とは何なのかが分かった気がした。
会計をした店員は、お釣りを俺に渡す時、俺の目を見て「ありがとうございます」と言ったんだ。
そしてもう一人の店員も、同じようにまた調理の手を止め、「ありがとうございます」と言った。
そう、常連だからやってたわけじゃなかったんだね。
これがこの店の考える「サービス」だったという事なんだろう。
それが分かった時、何とも言えない満足感が体の中から沸いてきた。
価値とは何? サービスとは?
接客って何だろう。サービスって何だろう。
きっとどれも正解なんて無いんだろう。
だけど、その店が考えて、考えてそのサービスに行きついたのなら、それはその店にとって唯一の、そして最高のサービスなんだろう。
アメリカを代表する経営コンサルタント、マイケル・E・ガーバーは言った。
「価値とは、顧客が店を出るときに、感じるものである」
「つけ麺大王 自由が丘店」は確かにラーメン以上の価値を提供してくれた。
そんな店を客が忘れるわけがないよね。
それがサービスというものなんだろう。きっと。