東京港区、東京タワーで有名な芝公園から徒歩10分位の所に、愛宕神社という、防火・防災に御利益があるとして知られる有名な神社がある。
こんな感じのスロープ状の階段を上って行く、結構とんでもない所にある神社だ。
平日だというのに参拝客は絶えない。
皆熱心にお参りをしている。
さぞかし御利益があるのだろうと思い、私も並んで参拝する事にした。
この石を撫でると福が身に付くらしい。
これまで何百万人という人に撫でられてきたのだろう。もう石のてっぺんがすり減ってテカテカ黒光りしていた。
しかし今日の趣旨は参拝ではない。
帰る途中で見つけたこの看板だ。
この看板がどうにも気になって仕方ない。
ガケ地危険につき
タバコ投げ捨て及び
立入禁止
勿論、言いたいことは分かる。
実際、この神社がある場所は本当によくこんな所に神社があるなと思う位の高台。
行きも帰りも急な階段を使うか、もしくはエレベーターを使わなくてはいけない。
だから、
これなら分かる。
ガケになっていて危険だから、立入禁止。ちゃんと筋が通ってる。
もしくは、こう。
タバコの投げ捨ては禁止だよ。あと、立入も禁止だよと。筋が通ってる。
では、これはどうか。
ちょっと変だよね。
ガケ地になっていて危険だからタバコの投げ捨ては禁止です。
これでは意味が通らない。
但し、単に”禁止事項”だけを書くんじゃなくて、これこれこういう理由だから禁止と説明する、その配慮は素晴らしい。
なのに文章のまとめ方がちょっと間違ってるせいで、やや説得力に欠ける立て看板になってしまってる。そこが実に勿体ない。
正しくは、こう書くべきだった。
これなら文章として正しい。
但し、今度は何だかインパクトに欠ける文章になってしまった。
それに何これだと、”タバコの投げ捨て禁止”が”立入禁止”のついでの禁止事項みたいな書き方になってしまって、無断立入する人は減ってもタバコの投げ捨てをする人は逆に増えるかも知れない。
そこでこうしてみた。
成る程、インパクトはある。文章的にも正しい。
だがちょっと上から目線で威圧的な感じになってしまった。
それに今ふと思ったんだけど、タバコの投げ捨て禁止ってことは、投げ捨てさえしなければタバコを吸いながらスロープを歩いてもいいのか?というそもそもな疑問が新たに沸いてきた。
どうももう少し考えないといけないようだ。
所で、この看板の最後に「社務所」とある。
この看板を書いたのが社務所ってことは、このスロープも神社が管理している場所、つまり神社構内って事になる。
であれば、神社構内は全面禁煙でいい筈だ。
それを踏まえて改めて看板を書き直す。
素晴らしい。
そもそもこのスロープも神社構内である事をはっきりさせればいい話だったんだね。
そして全面禁煙であれば当然タバコの投げ捨て以前の問題となり、必然的にタバコの投げ捨てする人も考えを改めるだろう。
常識ある日本人なら神社構内でタバコを吸おうなどと罰あたりな事は思わない筈だから。
これで、
1.ガケ地で危険だから立入禁止
2.スロープも神社構内だからタバコの使用は全面禁止
この2点の禁止事項がそれぞれ理由付きで説明できた。
何より文章として筋が通り、スッキリと意図が伝わる。
文章って奥が深いね。
でも本当に自分の意図を正しく伝えたい文章を書きたいのなら、こういう事を”くだらない”と思わないようにしない気持が大事だ。