しくじった・・・
先月、濃いピルクルという飲料が日清ヨークから発売された。
もちろん、そんな事は知っていた。
何せ私はピルクルを日常的に買って飲むし、ちょっと喉が渇いた時もお茶やコーヒーではなくピルクルを買ってしまう程のピルクルファンだから。
そんな私が初めて濃いピルクルに店頭でお目にかかったのは、ゴールデンウィーク明けすぐのこと。
いつものようにピルクルを買いにコンビニに行ったら、ピルクルの脇に見慣れない、濃いピルクルを名乗る飲料がドーンと鎮座しているではないか。
しかし私はその濃いピルクルを一瞥すると鼻でフッと笑い、普通のピルクルをレジに持って行ってしまった。
濃いピルクルが期間限定発売だと知ったのは、それから2週間程経ってからだった。
それから慌ててコンビニやスーパーを5,6件回り濃いピルクルを探すが、時すでに遅し。
もはや濃いピルクルはどこへ行ってもお目にかかれない、遠い存在となってしまっていた。
ああ、何てバカな事をしたんだろう。
なぜあの時「お、濃いピルクルなんて珍しい。一回飲んでみるか」とならなかったんだろう。
私がピルクルを愛してやまない理由
認めたくなかった。濃いピルクルなんて。
だって、考えて見て欲しい。
子供の頃、家に帰って冷蔵庫を開けると、大抵ヤクルトが入っていた。
多分、どこの家もそうだっただろう。
ヤクルトはとっても美味い。それに何より健康にいい。お腹も強くなる。
だが、ヤクルトの容器は食べざかり、育ち盛りの子供にとってあまりにも小さすぎた。
普通に飲んだら数秒で無くなってしまう。
だから僕らはよく、ヤクルトの飲み口の銀紙の所につまようじで小さな穴を開けて、そこからチュバチュバと吸いながらちょっとずつ飲んだりした。
つまようじが無い時は小指の爪でちょっとだけ銀紙に傷を付け、同じようにして少しずつ味わいながらヤクルトを飲んだ。
白状しよう。私がピルクルを好んで飲む理由は、そんな子供の頃、ずっと抱いていた夢がピルクルにはあるからだ。
いつか大人になって、ヤクルトを死ぬ程大量に飲んでやる、と。
もう、ゲップが出るまで飲んでやる。
その夢はピルクルの登場によってあっけなく果たされた。
そう、500ミリリットルの紙パックで死ぬ程飲めるヤクルト、それがピルクルの唯一にして最大の存在意義なのである。
だから、私の夢はここで終わりなのだ。終わりのはずなのだ。
なのに、なぜ濃いピルクル?
なぜ今になってそんなことを?
ちょっと理解できない。
製造元の日清ヨークによれば、「濃いピルクルを飲んでみたいという要望があった」との事だったが、そんな要望が本当に多くあったのか私には甚だ疑問だ。
第一、もし要望がそんなに多いのなら、なぜ期間限定販売にする必要があるのか?
そんなに需要が無いことを日清ヨークが一番よく知っていた、だからこその限定発売ではなかったのか?
カルピスと味わいカルピス
例えば、カルピスを濃くした味わいカルピス、あれは分かる。
子供の頃の我が家では、カルピスを水で薄める時は最低でも5倍以上に薄めるという暗黙のルールがあった。
それより濃くして飲もうものなら、「ちょっと、アンタのカルピス、ちょっと濃いんじゃないの? そういうことしていいと思ってんの?」と家族から容赦ないダメ出しが入る。
お陰で子供心にカルピスは美味いんだけどちょっと水っぽく、味わうと言うよりは風味を楽しむ的な?風流な飲み物であった。
だが、カルピスを水で割る際の黄金比率は、メーカーのホームページにも記載のある通り、3倍から4倍である。
つまり、我が家ではカルピスの黄金比率は守られていなかったのである。
しかしそれも致仕方の無いこと。
それぞれの家庭の経済事情もあろう。親の教育上の問題もあろう。
うちだけじゃない。多くの昭和の時代の家庭はそうだった筈だ。
その事について私は過去の我が家のルールを持ちだして、「うちのカルピス、作り方間違ってたじゃねーか」などと、親を詰るつもりはない(当たり前だ)
しかし、だからこそ、なのかな。
私だけではなく、あの頃の多くの子供には「いつか大人になって、すごい濃い、鼻血出るくらい濃いカルピスを作って飲んでやる!」という夢があった。
そんな昭和のあの時代を生きた子供達の憧れこそ、あじわいカルピスなのである。
だからあじわいカルピスは普通のカルピスと今でも共存してやっていけるのである。
結論(何もまとまってないが)
しかし濃いピルクルにはそんな、少年時代の憧れ的なストーリーが無い。
ただ漠然と、「いやぁ、濃いピルクル飲みたいって人、意外と多いと思うんでぇ」的なノリで発売しただけの商品なのだ。
だから私は売り場で濃いピルクルを見ても何の感情も沸き起こらなかったし、そして今もこうして濃いピルクルを飲めてすらいない。
勘違いしないで欲しいのだが、決して濃いピルクルが飲めなかった腹いせにこんなことを書いているわけでは断じてない。
人にその人だけのストーリーがあるように、乳酸菌飲料にもストーリーが無くてはならないのである。私が言いたいのもそういう事だ。多分。
しかし、もしどこかで売れ残った濃いピルクルがあったら、試しに飲んでやってもいい、そう思ってはいる。
いや、是非飲んでみたい。飲んでおくべきだった。
ピルクルデータ
発売元:日清ヨーク
発売年:1993年
特保認可:2001年
カロリー:約340kcal(500ml)
キャッチコピー:ゴクゴク飲める乳酸菌飲料
ライバル:マミー(森永乳業)←甘過ぎてライバルとは言えないが
名前の由来:1620年に英国から自由を求めてメイフラワー号で新大陸(アメリカ)に渡った人たち「ピルグリム・ファーザーズ・クルー(Pilgrim Fathers Crew)」を略してつけられた(ピルクルのひみつより)
ホームページ(ピルクルのひみつ):https://www.nissin.com/jp/products/brands/pilkul/special/1/