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一回ワールド・ベースボール・クラシック(通称WBC)で優勝候補筆頭と称されたアメリカ代表は二次リーグでメキシコ代表に敗れ、あっさり敗退した。

当時のアメリカ代表の主将を務めたデレク・ジーターは、敗因について記者に聞かれた時、こう答えた。

 

「仕方ないさ。だって僕らは普段、長丁場のシーズンを戦って勝つ野球しかしていないんだから。いきなり短期決戦で結果を残せというのが無理というものさ」

 

ジーターのこの言葉こそが野球という、日本でも国内最大規模のファン数を持ちながらも、一方で野球に興味の無い人には全く支持されない、摩訶不思議なスポーツであることを如実に物語っていると言えよう。

 

誤解の無いように言っておくと、ジーターが言っている事は事実であり、何も間違ってはいない。

野球というスポーツは日本でもアメリカでも春に開幕し、そして秋までに100試合以上を戦い、その中で最もいい成績を残したチームが優勝する長丁場のスポーツだ。

だから極端な話、どんなに強いチームでも負ける時は実にあっさりと、しかも大量失点差で負けることもある。

連敗することだってある。

酷いミスを連発してファンからブーイングを浴びる試合だってある。

だが、別にそれでもいいのだ。

 

最後の最後に一番いい順位で終わればいい。それが野球というスポーツ。

 

だが冷静に考えて見て、他にこんなスポーツがあるだろうか。

 

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何とも不思議なスポーツ、それが野球

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例えばサッカーを考えて見て欲しい。

Jリーグの試合で、負けていい試合なんて果たしてあるだろうか。

Jリーグだけではない。セリエAにしてもリーガ・エスパニョーラにしてもプレミアリーグにしても同様だ。

一つ負けたら命取り、それはリーグ戦だろうとカップ戦だろうと変わらない。

たった一つ勝てる試合を落としただけで、目まぐるしく順位が変わる。それが当たり前だし、それが本来プロスポーツのあるべき姿ではないのだろうか。

なのに野球は違う。

ジーターの言う通り、野球は長丁場のシーズンで一つや二つ負けようと幾らでも後から取り返しが効くのだ。

我々プロ野球を長年見続けている人間からしたら、それはごくごく普通の事。

だが、野球を普段あまり見ない人にとってみれば、やはりそれはおかしな話だろう。

 

そもそも負けてもいい試合があるってどういうことなのか。

 

そんな試合が多過ぎるから、ダラダラ毎日野球をやってるように見えるんじゃないの?と言いたくもなる気持ちもよく分かる。

この辺りが野球というスポーツが、野球に興味の無い一般人に理解されない最大の理由であるように思う。

賛否両論のクライマックス・シリーズ

さて、クライマックス・シリーズである。

現在これを書いてる次点でクライマックス・シリーズの真っ最中。

パ・リーグではシーズン1位の日本ハムと、シーズン2位のソフトバンクが、

セ・リーグではシーズン1位の広島と、シーズン3位の横浜DeNAベイスターズがそれぞれ日本シリーズ出場をかけて激しい戦いを繰り広げている。

だが一方で、プロ野球ファンの間では毎年この時期になると、ある話題についての議論が激しく交わされる。

それは、

 

「クライマックス・シリーズってそもそもやる必要あるの?」というもの。

 

クライマックス・シリーズが日本に導入されて、今年ではや10年目を迎える。

だが未だにこの制度は多くのファンにとって受け入れがたいシステムであり、素直にこの制度を受け入れて応援しているファンは恐らくファン全体の半数くらいだろう。

 

つまり、約半数のプロ野球ファンはこのクライマックス・シリーズに今でも心から納得できていないのである。

 

理由は至ってシンプルなものだ。

昔からプロ野球を見てきている多くのコアなファンにとって、プロ野球とは100試合以上に及ぶペナントレースという長いシーズンを戦って、最後に一番勝率がいいチームが優勝するという、実にシンプルで分かりやすいルールで行われるスポーツだったからだ。

 

なのにいきなり10年前からルールが変わってしまった。

長いシーズンを戦って苦労して勝率1位になっても、その後行われるクライマックス・シリーズという短期決戦で負けたら、日本一を決める日本シリーズには出られなくなったのだ。

では半年かけて戦うペナントレースは一体何なのか。

半年かけて100試合以上を戦って苦労して勝率1位になって優勝しても、クライマックス・シリーズで負けたら全てが水の泡。

こんな理不尽なことがあっていいのか。

 

クライマックス・シリーズには3位以上のチームであれば出場できる。

 

じゃあ3位のチームがクライマックス・シリーズに勝ってしまったら、長いシーズンを戦って1位になったチームはバカみたいなもんじゃないか。

 

彼らはその理不尽さに怒っているのである。

それを象徴するような年があった。

2010年のパ・リーグである。

この年、ペナントレースではソフトバンクと西武が激しく優勝を争っていた。

死闘の末、最後にはソフトバンクが西武を振り切って優勝を決めた。

だがその後に行われたクライマックス・シリーズで勝利したのはソフトバンクでも西武でもなく、シーズン3位のロッテだった。

結局ロッテがその勢いそのままに日本シリーズでもセ・リーグ優勝チームである中日ドラゴンズを倒し、日本一を決めた。

長いシーズンを見続けたパ・リーグファンからしたら「は?」という結果だった。

 

どうもプロ野球歴が長いファン程、この10年前から突然始まったクライマックス・シリーズには拒否反応を示す人が多い。

ペナントレースという長丁場を戦ってきた結果を、クライマックス・シリーズという短期決戦で一瞬の内に否定された気がしてしまうから。

 

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負けるのが当たり前、それが野球というスポーツ

だが、個人的な意見を言わせて貰うと、私はクライマックス・シリーズ制度にさほど反対ではない。

そもそも冒頭で書いたように、負けてもいい試合が多すぎる今のプロ野球のペナントレースの制度の方が余程問題のように思う。

例えば、今年ぶっちぎりでセ・リーグを制した広島カープですら、シーズンでは50以上負けているのだ。

更に言えば、日本プロ野球の投手の歴史の中で最も多く勝ち星を重ねた金田正一氏の勝利数は、他を圧倒するぶっちぎりの400勝。

一方でその金田氏の生涯の負けの数は298。これも歴代最多である。

これは一体どう解釈すればいいのだろうか。

私はこう解釈している。

 

野球とは、負けるのが当たり前のスポーツだと。

 

負けるのが当たり前のスポーツだからこそ、短期決戦には向かないのだと。

 

いやいや、日本代表は短期決戦であるWBCで第一回、第二回共に優勝してるじゃないか。

そう言うかも知れない。

 

だが、第一回、第二回共にWBCでは紙一重の結果だった。

第一回WBCではもし二次リーグ最終戦でアメリカがメキシコに勝ってさえいたら、二次リーグ敗退したのは日本だった。

そして恐らくアメリカが勝ち進んだら、そのまま決勝でキューバを破り優勝しただろう。

更に言えば、もしWBC出場チーム全てで100試合を戦ったなら、優勝するのは恐らくアメリカだろう。

ただ、日本の方が短期決戦の戦い方が上手かった。ただそれだけの事だろう。

野球において短期決戦と長期戦は全く別物なのだ。

そして多くのファンもそれを知っているからこそ、クライマックス・シリーズに反対しているのだろう。

強いチームが必ずしも短期決戦で勝つわけではない事を。

そしてそれこそが、野球というスポーツが一般人にイマイチ理解されない、わかりにくいスポーツである事を物語っているように私は思うのだ。