かし今年の春は例年に増して雨に祟られた。

せっかくの桜の季節だっていうのに、たまの休みは決まって雨。

仕事の日は気持ちいい位に晴れるくせに。本当に頭に来る。

この間ちょっとした旅行に行ったが、その日もやはり雨。

とある高速のSAでの一枚。

もう、一体どこなんだよと。見てるだけで鬱になってくる一枚。

おまけに今年の雨の日は決まって風も強く、せっかく咲いた桜を雨の度にことごとく散らしていく始末。

 

もうバカ!雨なんかこの世から無くなれ!

 

降るならせめて仕事中に降れ。仕事中なら幾ら雨が降ろうと全く無問題。

仕事で車で移動中に車窓から青空の元満開に咲き誇った桜を見る。こんな屈辱があろうか。

桜っていうのは休みの日に見るもんでしょう。一時の休暇に時間を忘れて堪能するのが日本の桜でしょうよ。

それが何故分からないのか天候の神よ!

 

というわけで今年は本当にロクな桜に出会えなかった。

と言いたい所だが、実は一日だけ奇跡が起きた。

その日は朝から代官山で仕事が入っていた。

何で朝から代官山みたいなクソオシャレで気取った街で仕事しないといけないのかとブツブツ言いながら東横線に乗っていたら、ふと閃いた。

代官山ってアレか。中目黒の次の駅か。

 

中目黒ねえ・・・そう・・・へえー

 

もう迷いは無かった。

 

よし!中目黒で降りよう!

 

 

それが東京の桜

さだまさしさんの、「風に立つライオン」という歌の中で、こんな詩がある。

ナイロビで迎える三度目の4月が来て今更

千鳥ヶ淵で昔君と見た夜桜が恋しくて

故郷ではなく東京の桜が恋しいということが

自分でもおかしいくらいです。おかしいくらいです。

 

ーさだまさし~夢回帰線~「風に立つライオン」 より

この歌を初めて聴いたのは17歳の頃。

その頃私は当然だがまだ実家に居て、これまた当然だが上京もしていなかった。

だが不思議とこの詩の意味だけは子供ながらに何となく分かった。

多分さだまさしさんはこの歌の中で、東京の桜は特別だと言いたかったんじゃないのだろう。

東京で毎日忙しく過ごす中、色んな事に慣れて色んな事に無関心になっていく中で、そんな中で東京で君と見た桜、それがなぜか今ふと思い出して、

おかしいね、もっと素敵な桜なら他にも知ってるのに、何故か今でも思い出すのは君と見た東京の桜。

 

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中目黒の桜、出会う桜

その日は4月5日。東京桜開花予想でもドンピシャの桜のピーク。天候は晴れ。文句無しの晴れ。

仕事は少し遅れてもいいや。どうせこの日を逃したら今年の最高の桜にはもう出会えないと知ってたし。これも運命だろう。

あれは今でも覚えてる。

上京してまだ間もない頃、いつものように東横線で帰宅中、中目黒駅で停まった電車の窓から見えた目黒川と桜の美しさに思わずハッとして電車を降りた時の事。

 

あの日から私にとって中目黒は特別な街になった。

千鳥ヶ淵に六義園、聖蹟桜ヶ丘の桜坂に大岡川プロムナード。

 

都会には素晴らしい桜の名所が数多くあるが、私の中ではこの中目黒以上の桜など東京周辺には存在しない。

中目黒駅から降りて徒歩3分。この景色はすぐそこにある。

 

 

ビルや建物が邪魔?せっかくの桜の雰囲気を壊す?そうじゃない。このビルをバックに見る桜こそ東京の桜。

 

 

人混みも、雑音も、目に入る風景全てを受け入れる事、それが都会で生きる道を選んだ人間の正しい生き方だと、まるで東京に教わっているようだった。

 

 

決してストーキングしてるわけではない。ただ偶然こうなっただけだ。確かに絵になるなとは思ったが。

 

 

決してストーキングしてるわけではない。ただ偶然こうなっただけだ。絵になるなとは確かに思ったが。

 

 

決して(以下略)

 

 

このヘタクソ純粋な川柳を見ても心が癒される。やはり桜は日本人にとって特別なもの。

 

ここで私も一句。

 

ビルさえも 桃色染まる 今日だけは(ありきたり)

 

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規模だけじゃ語れない、桜の深さ

中目黒の桜は総距離3.8キロ。植えられた桜の本数は約800本。

これは東京桜ランキング1位の上野恩賜公園とほぼ同数。

因みに日本一の桜と来場者数を誇る青森県弘前公園の桜の本数は約2600本。

東北出身の私も当然ながら弘前公園の桜は何度も見てきたが、確かに弘前公園の桜は圧巻の一言。

桁違いの桜が来場者を出迎えてくれる。まだ行っていないのなら人生で一度は必ず行くべき桜の名所だろう。

 

だが、個人的意見を言わせて貰えば、弘前公園の桜はあまりにも壮観過ぎて歩いていて「もういいかな」と思ってしまう事も何度かある。

それは弘前城と公園という、言い方はやや悪いが単調な風景に豪快な桜というシチュエーションのせいだと思われる。

 

しかしこの中目黒の桜は”街の桜”。

ビルが、建物が、出店が、車が、別に桜を見に来たわけじゃない一般の歩行者が、全てが絵になる。

そしてこの街全てが桜に染まる。

 

因みにこの日は文字通り桜のピークだったらしく、平日にも拘らず中目黒駅では混雑が予想されるので花見客は隣の代官山駅を利用するよう協力を促すアナウンスがされていた。

あなたは今年、どんな桜を見たのでしょうか。

忙しさに、日々感じる虚しさにかまけて今年も見れなかった、なんて日々を送っていませんか?

 

明日ありと 思う心の 仇桜

夜半に嵐の 吹かぬものかは

 

何があっても桜への思い入れだけは持っていたい。

そんな風に改めて思う、今日この頃。

そしてそれは子供時代には決して持てなかった感情である事も、ちゃんと理解している。

 

東北の桜はこれから満開シーズン。

いっそ北へ旅に出るというのもアリかも知れませんね。

いつかあなたに相応しい、いい桜との出会いがありますように。

 

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